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[9]
かくあらせたまえ
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晨菜
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暗闇の中で…その声はだんだんと近くなる。 耳に入ってくるのではなく、直接脳に響いてくる感覚……
逃げたいなら逃げればいい…
ドクン……ッ
でも、逃げられると思っているのか…
…うるさい…
なぁ、逃げ切れると本気でおもってるのかい?
ドクン…ドクン…
壊れちまえ
「アァアァァァアアアアアアアアッッ!!」 ただっ広い屋敷の中全体に響き渡るほどの、まるで内臓を抉られたかのように痛々しく響く声。 真っ先に駆けつけたのは、丁度主人を起こそうと部屋に近づいた執事だった。 いつもはノックを欠かさない彼だが、今日は扉を壊れるくらいの力で開け、真っ先に悲鳴の主のもとへ近づく。 「あ、アプリ様!!」 「ア…ッあ…っぅああぁぁあああッ…ッ!!!」 「あ、ちょ、ま!?アプリ様舌!舌噛みますって……っ!」 ベッドの中でシーツを思い切り掴み、もがき苦しんでいるアプリリスの姿をみたマリスはすぐさま事態を把握し、咄嗟にアプリリスを押さえつけ、口の中へ二本の指を突っ込む。が。 ガリッ! 「……ッッ!!?イッデェ―――――ッッ!!!!?」 「ん……ッ!んん…っっ う…ぅ……ッ」 マリスの指を思い切り噛むと、アプリリスはだんだん落ち着いてきたのか、動きは収まり、ゆっくりと口を開けると吐息と共にマリスの指を開放した。 それと同時に、屋敷の者達と一緒に血相をかいて駆けつけて来たステラが、自分だけアプリの部屋に入ると、扉を閉めて二人に近づいてきた。 「うー…痛ぁ〜…」 マリスは、傷口から流れる血とアプリリスの唾液で濡れた指をペロペロと舐めながらアプリリスを仰向けに寝かす。 「よくやったマリス」 「わー…ステラにほめられた〜(嬉しいが半泣)」 焦りの隠せない表情のまま、マリスの頭をぽんっと軽くたたくと、すぐにアプリリスのもとへ近づき、ゆっくりと彼の上半身を起こした。 「アプリ様…大丈夫ですか?」 「…ッも、う…大丈夫…。悪いな、毎回毎回… …ッッ!」 「何を言ってるんですか!!そんなことよりも…早く傷を見せてください…!」 ステラはアプリリスのワイシャツに手をかけて脱がそうとしたが、アプリリスはステラの手をそっと押さえ、それを拒んだ。 「アプリ様…!?」 「……心配ない。大丈夫だから…。出血は止まった…まぁ、痣は残るかもしれないが、シャワーを浴びればどうにかなる」 アプリリスはけだるい表情のままそういうと、サラサラと流れるその瑠璃色の髪をかきあげた。 「しかし…!!」 「気にするな…。それと、マリス。すまなかったな」 「いえいえそんな〜アプリ様の為ですからw」 「……またいつものように扉の前に塩を運んでおいてくれ…」 「ですがアプリ様…今回のはまた一段と傷がひどいではありませんか!」 切ない表情で少し怒った口調でステラが言うと、アプリリスは軽く微笑んだ。 「そんなことよりも、マリスの手をみてやれ。俺はなれているから」
*****
「アプリ様…大丈夫かなぁ〜ほんとにー」 マリスはステラに、先ほどアプリリスに噛まれた指を手当てしてもらっていた。 「………。」 「どーしたの、ステラちゃん?さっきから黙り込んじゃって」 「……このところ…頻繁になってきたような気がするのは俺だけだろうか…」 包帯を巻き終わると、ステラはうつむいたまま立ち上がった。 「? あの呪いのコト?」 「…前は半月に一度とか…それくらいだったろう…。なのに最近では一週間に一回…下手したら三日に一度とかある…!」 ドンッ! ステラは持っていた救急箱をテーブルの上に乱暴に置いた。 「す、ステラちゃ〜ん;もう少し優しくおいてよー公共物破壊はいけないんだよ?」 「…お前はアプリ様が心配じゃないのか…?」 ステラはゆっくりとマリスの方に振り返り、据わった目で見すえた。 その瞳に、マリスはびくっと肩を振るわせる。 「し、心配じゃないわけないじゃんか〜!(汗) でも、ステラらしくないよ。落ち着いて物事みないと、肝心なものを見逃しちゃうかもだよ?」 マリスは珍しく真面目な意見をステラに投げかける。 ステラも、その言葉にため息を漏らし、やっと肩の力を抜いて椅子に腰掛けた。 「……なにも出来なくてイライラするのはわかるけどさ、たぶん一番つらいのはアプリ様だし。ね?」 マリスの言葉に、ステラは微かに微笑むと、 「…ふん。お前の口からそんな言葉が出てくるとは、正直想像もつかなかった…。」 「ひどいなぁ、ステラちゃん;」
痛みは無くなった…。 裂傷はしばらく消えてはくれないが、今回は痛みが治まるのは早かった気がする…。 「…血染めのワイシャツと身体をどうにかしなきゃな…」 アプリリスは、ベッドから立ち上がると、着ていたワイシャツをスル…と二の腕まで下ろした。 そして、自分の背中に軽く目を向けた。 「…"神を冒涜するものに神罰を"……か」 背中に浮かび上がった裂傷は、ひとつの言葉だった。それを口にすると、アプリリスは目を細め、眉を顰め、舌打ちをして、呟く。
「虫唾が走るんだよ、偽善者め」
------------------------------- アプリリス(バルビ)
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